2009年01月07日

幸せな王子

テーマ:コミュニケーションスキル

 「オージー卸」は、小さな卸問屋。オーストラリアから良質なワインを比較的安価で買い付け、国内で販売しています。諏訪路君はこの会社で営業職を務め、ワインを購入するレストランやホテルを探しています。

 オージー卸では、だんだん経営が苦しくなってきていました。一時期のワインブームが去り、なかなか大口の顧客が見つからなかったためです。予算が少ないために大きな広告も打てず、上に抜け出しにくい状況でした。規模が縮小するにつれて、仲間の社員は一人、二人と、徐々に別の企業に巣立っていきました。オージー卸は、いつ潰れるかわからないほどの経営危機に陥っていました。
 経営自体は苦しい状況でしたが、取り扱っているワインの品質が良いこと、社長が誠実に熱意を持って一生懸命に取り組んでいることに共感した諏訪路君は、辞めることは考えず、モチベーションを高く保って営業を続けていました。

 諏訪路君は業態を調べているうちに、何社か、お互いの需給ニーズがマッチする、見込み客となりそうな顧客予備軍を見つけました。しかし、それらの会社に対してコネを持っていない諏訪路君は、飛び込みで営業にあたるしかありませんでした。

 まず諏訪路君は、会社が仕入れているワイン全種の情報を片っ端から洗い直し、インプットしました。各種データから今年の収穫状況、歴史、誕生にまつわる逸話まで広くカバーし、自社のワインを提供する際に自信を持って薦められる下地を作りました。

 次に、見込み客にアポイントを取りはじめました。何社か断られたあと、ようやく一か所のアポイントを取ることができました。さっそくそのアポイント先に営業に向かいました。
 担当者はゆっくりとした口調で、鋭い視線を諏訪路君に向け、警戒していました。普段は早口で話す諏訪路君でしたが、担当者のペースにあわせて会話を進め話をよく聴いて、どのような商品が最も適当かを判断しました。幸いなことに、オージー卸ではニーズにマッチする商品を取り扱っていたため、その商品を自信を持って薦めました。諏訪路君は、無意識のうちに相手の身振り手振りと同様の振舞いをしていました。
 はじめのうちは警戒していた担当者も、自然と打ち解け、最後には諏訪路君と固く握手をしていました。もともと良品質の商品を扱っていたため、担当者も納得し、商談を成立させることができました。
 
 やがて信頼を勝ち得た諏訪路君は、定期的に大量の商品をこの会社に販売し、大口の得意先を獲得しました。
 諏訪路君の活躍により、オージー卸は安定した売上を計上し、業績を伸ばすことができました。ぼろぼろだったオージー卸は、立派になって生まれ変わりました。

 馬とロバ」の回に取り上げた合意形成について、もう少し掘り下げて考察します。

 ここでは、「ラポール形成」について取り上げます。
 「ラポール」とは臨床心理学用語で、セラピストとクライアントが相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞ったり感情の交流を行える関係が成立している状態を表す語です。
 神経言語プログラミング(Neuro-Linguistic Programming:NLP)という人間のコミュニケーションに関する学問分野が生まれ、発展し、後にそれをビジネスに応用しようという動きが起こりました。NLPでは、ラポールを形成することが、顧客とビジネス上での信頼関係を築く第一歩となります。
 この分野ではそれぞれ定義された仰々しい名前がついてますが、大胆に要約すると、以下のような行動を行い、相手が話しやすい空気をつくることを導きます。
 ・相手のペースにあわせる。
 ・相手の動作、身振り手振り(時には呼吸ペース等)をまねる。
 ・相手の話に関心を示す。
 ・話を聴く姿勢を示す。
 ・共感していることを伝える。
 ・自分の話に自信を持つ。
 ・相手の表情から感情を判断し、安心する話題を選ぶ。
 ・笑顔。
 優秀な営業が自然と身につけていることが多いですね。優秀でない営業は、自分の話を第一に置いてしゃべり倒したり、クライアントの都合を考えなかったり、自信を持たずに話したりします。
 営業職に限定された話でなく、普段の周囲とのコミュニケーション時にも使える概念です。但し、あくまで話しやすい環境をつくるテクニックですので、そこから後は、本音を持って会話しましょう。テクニックに傾倒しすぎてしまうと、中身のない人という印象を与えてしまいます。
posted by cozyjet at 06:00| Comment(2) | TrackBack(0) | イギリス働話
この記事へのコメント
いつもながら勉強になります

ラポールの形成、私の職種にとってはもっとも重要なことなんですが、なかなかに容易ではないんですよね

参考にさせていただきます
Posted by ソイルマスター at 2009年01月08日 12:12
> ソイルマスターさん
いつもありがとうございます!

人間は様々な性格を持っているので、その人毎にカスタマイズして接する必要があるのが大変ですね。
人とのコミュニケーションは、一番難しくて深い分野だと、私も思います。。
Posted by cozyjet at 2009年01月08日 22:50
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/24976201
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック