2009年06月12日

狐と木こり

テーマ:人脈構築

 木津根さんは、ある企業で書類を作成する業務を行っていました。作成した書類は、上司の郡山さんに確認してもらい、承認された上でクライアントに送る手筈となっています。

 木津根さんは物事をはっきり言う性格で、郡山さんはいつも調子のいい事を言っています。
 今日も郡山さんは、
 郡山さん「何かあったらオレが責任を取るから、安心して働いてくれ」
 と言っては仕事中のみんなの周りをまわっていましたが、いつもネットサーフィン三昧。仕事らしい仕事をしているところをみたことがありませんでした。
 木津根さんは元々真面目な性分で、郡山さんの勤務態度にイライラしていました。
 郡山さん「あぁ、忙しい忙しい」
 木津根さん「…はぁ」

 ある日、木津根さんは、書類の記述でミスをしてしまい、誤って記述したものをお客様に送ってしまいました。長い付き合いがあるクライアントの狩野様に、ご迷惑をおかけしてしまったのです。郡山さんのチェックは入っていたはずでしたが、その段階でミスが発見されず、そのまま送ってしまっていたのです。
 幸いそれほど大きなミスではなく、すぐさま穴埋めを行い、上司の郡山さんに報告しました。
 しかし、ミスはミス。先方に迷惑をかけたことは間違いありません。木津根さんは郡山さんと一緒に謝罪に出かけました。

 客先に着き、郡山さんは言いました。
 郡山さん「いやぁ、申し訳ない。私の指導の至らなさが招いたミスです」
 木津根さん「大変申し訳ありませんでした。完全にこちらの不注意でした」
 狩野様「いえいえ、たいした損害もありませんし、ご足労頂くほどの事でもありませんよ」
 木津根さん「いやいや、本当にすみませんでした。」
 
 一通り謝罪が終わった後、質問があるということで、客先の別部署の方から声をかけられ、木津根さんはそちらのほうに出向いていきました。郡山さんは違う案件の話で、狩野様と話をしています。

 木津根さんは説明が終わり、郡山さんと狩野様がいる部屋に戻っていきました。
 部屋の前まで着いた時、二人が話しているのが聞こえました。
 
 郡山さん「いやぁ、部下の木津根は要領が悪くてねぇ。どうやら私がOKを出した書類と間違えて、書きかけの別なファイルを送ってしまったようなんですよ」
 木津根さん「!」
 狩野様「いえいえ、その話でしたら本当に問題ありませんので…」
 郡山さん「後できつく指導しておきますよ!」
 木津根さん「…」

 帰り道。
 郡山さん「感謝しろよぉ、オレのおかげで謝罪の場をセッティングできたんだからなぁ」
 木津根さん「…はぁ、そうですね」
 郡山さん「おい、なんだよその態度は?それが上司に対する態度か?」
 木津根さん「ご自分が理由を一番わかっているんじゃないですか?」
 郡山さん「…もしかして、聞こえてた?いや、ああでも言わないと狩野様も納得しないんじゃないかって考え」
 木津根さん「あっ、今日はもう時間ですね、ここで失礼します!」
 郡山さん「おーい…なんだよ、怒りっぽいヤツだなあ」

 それ以降、木津根さんは、別な先輩に書類をチェックしてもらい、その後で形式上郡山さんにチェックを依頼するようになりました。

 今日のテーマは、エントロピー増大の法則についてです。

 学生時代に、物理学、熱力学を受講したことのある方以外には、なじみの薄い言葉かもしれません。
 熱力学でいうエントロピーとは、端的に言うと、乱雑さ、無秩序を表した単位の大きさです。エントロピーが大きければ大きいほど、秩序がない、混沌とした、平均化された状態だ、というイメージになります。
 エントロピー増大の法則とは、閉じられた系において、時間経過に伴いエネルギーが平均化されるという意味をもつ法則です。
 例えば、冷たい水の中にお湯を注ぎ、なにもせずにしばらく待つと、お湯の温度は拡散してぬるま湯となり、やがてどこも同じ温度になります。しかし、逆はありえません。何も力を加えずにいくら待っていても、水とお湯に分離されることはありません。

 この法則が、どのようにビジネスに関わってくるのでしょうか?
 
 以下のようなシンプルなモデルを考えます。
 円を描き、中央に自分自身を配置し、自分と同じポジションに何人か(ここでは50人としています)の人間を配置します。この円は、企業という枠組み、自分の携わる領域、人脈などとして捉え、周りの人間は、社員、ステークホルダ、友人・知人などに捉えてください。同じポジションにいる人は、それぞれがみなランダムに勝手な動きをすると仮定します。そのまましばらく待ったらどうなるでしょうか?
 以下に、上モデルを表したアプリケーションを配置しました(要Java Applet動作環境)。リンクをたどり、クリックしてみてください。
 [何も手を加えない場合の行動モデル]
 いかがでしょうか。ランダムに動く周りの人間は、蜘蛛の子を散らすように拡散していき、時間経過とともにやがて視界(円の中)から消えてしまいます。最後には、一人ぼっちになってしまいました。
 
 この問題を解決するには、どうするべきでしょう?方法は何点かが挙げられます。
 
 まず、円の領域を拡げることが考えられます。現実社会では、行動範囲を拡げるイメージでしょうか。円の半径が大きければ、周りの人たちが円から出てしまうまでの時間が稼げます。また、範囲を拡げた分、一度にかかわることのできる母数が増えることになります。
 しかしこの方法は一時的な解決方法で、結局は一定時間が過ぎてしまうと周囲の人間は円から抜け出してしまいます。単体では大きく有効な手段とはならないでしょう。

 次に、外部からの人の流入を計算に入れることが考えられます。円の大きさを保っている状態で、自己領域の周囲にも同じようなモデルがあると想定できれば、外部から入ってくる人の数は外部へ出ていく人の数と同数としてカウントできるでしょう。
 しかしこの方法は、特定の個人と接する時間が限られたものとなってしまいます。せっかく築いた人脈も、また一からやりなおしです。深い話はできず、同じ次元での付き合いが何度も何度も続いていく…これもやはり、単体では厳しい解決方法となります。

 最も良い方法は、「外力を加える」ことです。
 エントロピーが増大するのは、「閉じられた系」である、という前提があります。水の入ったビーカーを下から炎で熱すれば、温度は上昇します。
 一人ひとりのステークホルダに対し、何かしら自分に近づいてもらえるような行動を繰り返すことで、上問題は解決されます。この方法は、長く、深く、安定した人間関係を築くことができます。
 [互いに惹かれあう場合の行動モデル]
 いかがでしょう?なかなか円から外れる人間はいませんね。

 当然の事じゃないかと思われるかもしれませんが、新しい人材を探す事に夢中になり、周りをおろそかにしてしまう人は意外に多くいます。本当に大切なのは、強固な人脈網、基盤を構築する事です。
 ここで上記2つの方法と組み合わせることで、新しい人材の流入を促進し、現在の基盤に吸収して調和し、らせん状に人脈を築くことができます。基盤ができているからこそ有効な方法論です。
 
 惹きあうための手段は、誠実さ、互いに得る利益の享受、人間性、知的好奇心の共有、ユーモアなど、様々です。いずれにせよ、何かしらのアクションを起こさないことには、関係を築くことは不可能でしょう。自分に近づく人間は、あなたのリソースを奪おうと考えている人を除いて、何かしらあなたに魅力を感じているからそのような行動に出ます。

 このモデルは非常に単純化してあり、実際には閉じられた系ではなく、社会があり、思想があり、物理法則だけでは解決できない事柄があります。しかし、根本部分では「何もしなければ人はやがて疎遠になってゆく」ことも事実ではないでしょうか。
 ビジネスの根幹は、人と人とのつながりにあります。この意識だけを頭の片隅においておくだけでも、大きな違いがうまれます。

 ちなみに、物語にあるように、人の信頼を裏切るような事を繰り返すと、あっという間に人脈は失われてしまいます。
 [互いに反発しあう場合の行動モデル]
 特に、負の感情は相手に一度抱かれると取り戻すのに大きなエネルギーを必要とします。自分に不利益になると思われる人と距離を置く場合を除いて、十分注意して行動しましょう。

 ※携帯電話ではJava Appletを確認することはできません。また、PCの一部ブラウザでは正常に動作しない可能性があります。ご了承ください。
(動作確認:Java1.6.0_11、IE8.0、FireFox3.0.10)
posted by cozyjet at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | イソップ働話
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