2009年08月01日

星の金貨

テーマ:キャリアプランニング

 証券系の金融機関で働く、中堅女性社員がいました。
 彼女は勤勉ですが誠実で、何よりも人との関係を重視していました。

 後輩が経験不足で困っている場合、自分の業務がある一方で教育に力を注ぎ、後輩の成長を心から望みました。
 
 ある手法で大きな利益が得られると予想できても、社会的道義に反すると判断した場合、選択肢から外すようにしました。しかしビジネスである以上利益を出すことを命題と捉え、損失は最小限に抑える努力をおこないました。

 彼女は、目に見える形での成果は他の同期社員に比べ、多くありませんでした。そのため、給与はそれほど上がりませんでしたが、つつましい性格であったため、一定額で満足していました。
 得られた給与も、交際費や書籍の購入などに充てました。

 やがてしばらく時が流れ、ある重要なポストが空いた時、長く見ていた周囲のメンバーからの推薦で、他の同期ではなく、彼女がそのポストに着くことになりました。本当に大切な部分は、ゆっくり理解され、浸透していたのです。

 今回は“投資”の話です。
 とはいっても、ここでのテーマは、株式や為替、先物取引などの直接的な金融投資ではなく、自己に対する金銭や時間の投資に関してです。

 あなたがある一定の財産を持っている時、その財産をどのようなことに使いますか?
 ・貯蓄する
 ・資産運用する
 ・自己投資する
 ・消費する
 これらの選択肢が浮かぶと思われます。
 それぞれ一長一短があります。ひとつずつ順にみてみましょう。
 
 ・貯蓄する
 最も単純な選択肢で、特に日本人にはこの選択を行う人が最も多いでしょう。特徴として、ノーリスク・ノーリターンではありますが、経済が成長する場合に成長率を上回る利息が設定されていない場合、結果的には損をしてしまいます(微々たる額ではありますが)。経済が停滞している、または落ち込んでいる場合には、貯蓄は有効な手段となります。

 ・資産運用する
 株式や為替、先物取引などにより、資産を増やす手段です。資産が増える可能性と損失が発生するリスクがあります。
 キャピタルゲイン・インカムゲインに加え、運用のノウハウを学べる、経済に詳しくなるなどの副次的効果が挙げられます。投機は行わないように気をつける必要があります。

 ・自己投資する
 学習や鍛錬、交流など、自分自身に資産や時間を使うことにより、それによって得られる知識や技術、人脈を使って、より多くの利益を得ることを目的とします。

 ・消費する
 社会的にみれば経済が潤うなどのメリットがありますが、個人レベルでは損失となることが多いでしょう。しかし、消費によりストレスを緩和し業務意欲を増進させる、知見を広げることができるなどの効果があります。浪費は論外ですが。

 今回の話では、自己投資にスポットをあて、戦略的ROIについて検証します。
 ROIとはReturn on Investmentの略で、「費用対効果」、「投資対効果」、「投資利益率」などと呼びます。

 投資にかかった金額をx、投資によって得られた利益をyとすると、
 y ≧ x
 y ÷ x ≧ 1
 である必要があります。
 y ÷ x は、大きければ大きいほど、より効果があります。機会損失(金銭や時間を投資しなければ得られていたはずの利益の損失分)をあわせて考慮するなら、y ÷ xが1では厳しいでしょう。

 投資の意思決定は、以下のプロセスに沿って行います。
 ・情報の収集
 ・情報の判断
 ・投資の実行
 ・投資の効果測定
 ・投資の再考

 ひとつずつ分析していきます。

 ・情報の収集
 投資の判断に必要な情報を集めます。
 全く新しいビジネスを発信する場合を除いて、歴史上様々な例が残されてあり、何かしら近い形の用例が残されています。質を重視する場合は書籍など、量を重視する場合にはインターネットなどのチャネルを用います。人づてに活きた情報を得ることも有効です。
 
 ・情報の判断
 インターネットの普及により、現代社会においては情報が洪水のようにあふれています。有効な情報を取捨選択する能力が求められます。自己の利益にかなった情報を素早く、正しく、効率的に選別する能力のことを情報リテラシと呼びます。
 インプットとアウトプット、投資に対する利益を定量的に見定めます。
 筆者はIT関連の職業に従事していますが、企業がIT投資において失敗してしまう場合、この時点で失敗していることが多くあります。ある側面では成功しているように見えても、別な角度からは失敗になるなどはよくあるケースです。この判断は、とても重要なファクターです。

 ・投資の実行
 判断した情報をもとに、投資を行います。
 投資した結果、投資額を上回る効果が予想される場合、実際に投資を行います。
 資産運用はよく「余裕資金」でおこなうことと言われますが、自己投資も同様です。資金繰りがショートしてしまっては意味がありません。
 また、前述の機会損失を考慮したROIが効果的ではないと判断した場合、投資を行わない選択をします。
 あわせて、時間軸も考慮しましょう。長期的視野で効果がうまれる場合、その間の資金が担保されているか、その間により効率的な投資が行えないかの判断を行います。また同様に、得られる効果のライフサイクルを考慮します。短期的には効果が少なくとも、ライフサイクルが長い効果であれば、長期的にはプラスになることがあります。その逆も然りで、短期的に利益が得られると予想されても、収束されることが予想される場合、長期では結果的に投資が効果を上回らないか判断します。

 ・投資の効果測定
 投資を行った結果を確認します。
 予想と実際は異なる場合が多くあります。投資して得られた結果を確認し、予想時の想定と比較しましょう。
 一定間隔で効果を確認することが望まれます。測定データが多くあればあるほど、予想しやすくなります。

 ・投資の再考
 当初の予想を下回っていた場合、投資を続けるべきか判断します。意地になって続けても効果が上向かないと早めに見切りをつけましょう。
 逆に予想よりも高い効果が得られている場合には、増資を視野に入れましょう。
 予想通りだった場合でも、社会的情勢や周辺環境の変化、突発的な事象の発生などを考慮しながら、投資の有無、投資額の増減を定期的に判断します。

 ここまで、自己投資に対するそれぞれの過程で気をつけるべき項目を確認しました。ここまでは、金銭や時間の効率性に着目しています。
 しかしここで注意してほしいことは、これらはあくまでビジネス上の考え方の話であることです。
 人間関係において、金銭のやりとりは非常にドライなつながりです。むやみやたらに人とのつながりに金銭や時間の効率性だけを求めていては、相手もいずれ同様の立場・考え方に辿りつきます。自分自身が何かのタイミングで非常に弱い立場になったとき、そのような関係はあっという間に途絶えてしまいます。
 物語のように、無償の貢献やサービスの提供があってこそ、真の人と人とのつながりといえます。本当に困った時に助けてくれる人物は、オフビジネスでの関係であるパターンが多くあります。ONとOFFの切り替えを行い、OFF時はまた別な判断を行いましょう。
 もちろんビジネスの関係上でも、貢献や奉仕の心は大切です。ビジネスでは“利益を得る”という命題がある以上難しい部分はありますが、自己の利益のみを最大化する人ばかりではないので、本当に長く付き合いたい人との間では、利益だけではない関係を築きましょう。

 人脈、趣味や休暇の過ごし方などでは、エフィシエント、効率的でなかったとしても、その中に、またはその過程にこそ価値があることがあります。このような分野においては利益のみに偏重せず、個人の価値観や社会性、道徳に従って行動すべきです。特に日本の社会では、これらが重視されます。人間的な魅力にもつながります。

 ある曲に、このような歌詞があります。
 「くだらない話で安らげる僕らはその愚かさこそが何よりも宝物」
 利益という観点では、投資により自己を高めることは大切です。ですが、直接的な利益だけでなく、このような部分も大切にしていきたいものです。
posted by cozyjet at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | グリム働話
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