テーマ:ストラテジー
ある企業に、花坂さんという人がいました。花坂さんは企業のトップ、経営者です。人当たりがよく、分析眼にすぐれています。
花坂さんの部下に、犬本君という優秀な若手がいました。普段の業務のほか、自学自習で普段とは違う分野について勉強していました。その分野は、生まれたてのまだ小さなジャンルで、まだまだ現段階ではお金に変えられるような内容ではありませんでした。
花坂さんは頑張っている犬本君をみて、犬本君が勉強している分野のマーケットを予測し、市場が大きくなることを見込んで、犬本君に投資することにしました。犬本君に権限を与え、そちらの分野の研究に専念できるよう仕事配置を転換し、環境を整えました。
やがて、その分野は急成長。そのタイミングで、犬本君は幅広い知識を持っていたため、業界をリードできる存在となりました。おかげで、花坂さんの会社には注文が殺到し、売上げを急速に延ばすことができるようになったのです。
いっぽう、花坂さんのコンペ企業に、戸鳴さんが経営する会社がありました。戸鳴さんは、花坂さんの様子をみていて、同じように真似をして儲けようと企んでいました。
犬本君と同じように、戸鳴さんの会社にも、ある分野に力を注いでいる部下がいました。その分野は今とても流行っている分野で、これなら間違いないと判断した戸鳴さんは、花坂さんのように投資することを決めたのです。
しかし、戸鳴さんが見込んだ分野は、その後、縮小傾向に。戸鳴さんの企業は、投資に見合ったリターンを得ることができず、赤字に転落してしまいました。
桜の季節にこんにちは。今日は「花咲かじいさん」を題材に取り上げてみます。
物語の二人は、同じような規模で同じように投資を行いました。しかし、花坂さんの企業は成長し、戸鳴さんの企業は衰退してしまいました。
これはなぜでしょうか?
今日のテーマは、PLCとPPM、そしてBCGマトリクスについてです。
順番に見ていきましょう。
まず、PLC。これは、商品ライフサイクル(Product Life Cycle)を表します。
商品には、「人生」と同じように、一定期間のライフサイクルが存在します。
一定の時間が経過するにつれ、徐々に売上が伸びていき、ある点を山のピークに、あとは緩やかに下降していきます。
この曲線を、経過時間のタイミングによって、4つに分類することができます。
・導入期:認知度が少なく需要が少ない状態。珍しもの好きな消費者が手を出す段階。
・成長期:徐々にその商品が浸透し、需要が急激に増加する段階。参入する企業が増加する。
・成熟期:需要量は頭打ちとなるが、参入する企業が増え続ける段階。
・衰退期:需要が減り始め、企業が徐々に撤退していく段階。
この図をもとにすれば、企業は成長期・成熟期に利益を得ることができます。導入期や成長期から参入すると、利益を十分に得られることが可能となります。
それでは少し別の視点から見てみましょう。
次のキーワードは、PPM:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(Product Portfolio Management)です。
これは、複数の商品や事業(プロダクト)を、どのように経営資源分配して組み合わせるか(ポートフォリオ)を管理する概念です。
PPMの代表的なものとして、アメリカのコンサルティング企業ボストンコンサルティンググループが提唱したBCGマトリクスとよばれるものがあります。
これは、縦軸にマーケットの成長性、横軸に市場に対する相対的な自社のシェアを与えたものです。市場-成長マトリクスとも呼ばれています。
BCGマトリクスでは、そのマトリクス上での位置付けにおいて、4つのタイプに分かれます。
・負け犬:自社のシェアも市場成長率も小さい。
・金のなる木:市場の成長要素は小さいが、自社で大きなシェアを獲得している。
・問題児:自社のシェアは小さいが、市場は成長している。
・花形製品:市場が成長し、自社のシェアも大きく持っている。
先ほどのPLCと比較すると、導入期→問題児、成長期→花形製品、成熟期→金のなる木、衰退期→負け犬とマッピングすることができます。
それぞれのタイプ、フェーズでは、どのような対策をとればよいのでしょうか?
最も利益が得られるのは、「金のなる木」に当たる製品や事業です。既に大きな市場で、自社のシェアが大きいわけですから、掛け合わせれば最も採算性が高いという結論が導かれます。この「金のなる木」には大きな追加投資を行わないようにし、ここで得た利益を、「問題児」につぎ込みます。「問題児」に投資することにより、その製品は「花形製品」に位置をシフトできるようになります。「花形製品」はしばらくの間利益をあげるプロダクトなので、その状態を維持するよう努めます。「負け犬」に達したプロダクトは、成長性を見込めないため、早い段階で戦略的撤退を検討します。
冒頭の物語で、花坂さんは「問題児」に投資することで、「花形製品」に変えることができました。しかし、戸鳴さんは「金のなる木」に対して投資をしてしまい、これ以上市場のシェアが広がらず、むしろ縮小してしまったために、赤字化してしまいました。
この分析にあたり、市場をどのように位置づけるか、また、製品が実際にどの分野に位置するのかを、しっかりと定義する必要があります。充分な情報をもとにせずに分析しなければ、想定していた市場自体のパイが大きくならず、割りを食ってしまいます。現代は情報社会。分析材料になる情報は、以前に比べれば簡単に手に入ることでしょう。
自分が携わっている分野や製品の市場状況を調べ、どこに注力をするか。また、どの市場から撤退するべきか。愛着や感情に流されたり、今現在目の前の作業に追われたりなどで、その判断を端的に行うことが難しい人は多いですが、気をつけるべき事項です。
投資を全く行わない事は論外ですが、どのように行うべきであるかについて、慎重に判断しましょう。
2010年04月06日
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