2009年07月04日

漁師とマグロ

テーマ:モチベーションマネジメント

 亮君は、小さな会社に所属する社員。
 彼のモットーは、とにかく自分の身になりそうなことであれば「とりあえずやってみる」こと。将来的に何かビジネスを興そうと考えていますが、まだやりたいことは決まっていません。とりあえず新聞や書籍・雑誌を読み、アンテナを張り巡らせていました。会計など共通で必要な知識を身に着け、自分が好きなことと同じ興味を持つ人を探しては、頻繁に声をかけ、輪を広げる努力をしていました。
 
 やがて、あるビジネスのアイディアが知人から出されました。亮君は強く興味を持ち、そのアイディアをもとに事業を興すことにしました。

 事業を興してからは、それまでにとりあえず学習したことが役に立ちました。また、それまでに構築した人脈も有効利用しています。
 とにかくやっておいてよかった、亮君は思いました。

 この話は、筆者の友人がモデルになっています。とにかく行動力のある友人で、まだ具体的にどのような事をやりたいか決まってはいないものの、将来的には何かしら成し遂げようと熱い信念を持ち、賛同者を周りにつけています。人間的な魅力も高い人物です。
 行動し続ければ良いことがあるということを端的に物語り、裏付けています。
 単純に、1行動する人と10行動する人がいれば、後者は前者より10倍の機会に恵まれることになります。デメリットは10倍の負荷がかかることですが、金銭面ではなく行動面で賄えるのであれば本人の体力と効率次第ですので、行動しないに越したことはありません。

 それでは、やる気が起こらず、なかなか行動に移せない場合、どうすればよいでしょうか?
 行動力の源泉を、心理学、脳科学からひもといてみましょう。

 人の脳には、側坐核と呼ばれる部位があります。1cm程度の小さな器官ですが、GABA、ドーパミン、などの神経伝達物質に強い関連を持ち、報酬、快感、嗜癖、恐怖に強くかかわる部位と認識されています。
 ラットの実験で、スイッチを押すとこの部位に電流が流れるという実験を行ったところ、ラットは進んでスイッチを押しにいくという結果が得られました。
 人間にとっても「やる気」にかかわる大きなファクターであると認識されています。

 それでは、どのようにすればこの部位に刺激を与えることができるのでしょうか。
 脳科学の世界では、以下を実施することで、側坐核に刺激を加えることができると言われています。
 ・作業自体を楽しむ
 ・目標を定める
 ・とりあえず着手する

 ここで注目してもらいたいのは、最下部の「とりあえず着手する」の部分です。
 作業が楽しければ問題ないですし、明確な目標・マイルストンの作成と定期的な改訂は、一般的にもよく言われているモチベーション管理の方法論です。しかし、基礎学習や反復学習など、すべて楽しいものとは限らず、また、日によって気のりしないということは往々にして発生します。
 気のりしない状態でも、とりあえず作業に着手すると、この側坐核に刺激が伝わり、徐々にやる気が出てきます。これをドイツの精神医学者エミール・クレペリンは、作業興奮と名付けました。
 現在この概念は、学習塾などで利用されています。

 経験則としても、頷けますね。ランナーズ・ハイなども同種ではないでしょうか。
 筆者は掃除などあまり頻繁にしないタイプですが、一度着手するとかなり念入りにしてしまいます。

 あわせて、ピグマリオン効果について記述します。
 これは、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールが提唱した概念で、人は、期待された成果を出す傾向がある、というものです。教師期待効果とも呼ばれています。
 ある教室において、無作為に抽出した学生を「この学生は知能テストの結果、今後数カ月で成績が伸びる」と教師に伝えたところ、実際に数ヵ月後その学生の成績が上昇した、というものです。
 学習を受けた人物は、教師からの期待に応えようとする心理が働いた、というわけです。

 これを応用し、自分を教師と生徒の二役、もしくは協力者を教師に見立てて、必ず目標が達成できると信じて行動しましょう。プラシーボ効果とも相まって、効率よく学習することができます。
 成功哲学の祖であるナポレオン・ヒルも、絶対にやる、絶対にできるという信念が大切であると述べています。
 一寸法師の回でも同様の主張をしました。
 「やればできる!」
 「なんでやらないんだよ!」
 あるテニスプレイヤーが熱血指導する時に使うこれらの言葉、あながち間違いではないんですね。
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2009年06月26日

舌切り雀

テーマ:人脈構築

 吉田さんと浴張さんは、どちらも営業職。それぞれ、自身のコネクションを作るのに精を出しています。

 吉田さんは、小さなコネクションを大切にしています。身の回りの上下または同期社員をはじめとして、いつもお世話になっている顧客、勉強会やセミナーに参加した際に「この人は!」と思えるようになった人など、自分に関係の深い、もしくはその可能性が高いと思えるような人たちとの関係を大切にしていました。
 そして、時々勉強を兼ねて、自分がこれまで携わっていなかった方面に顔を出すように心がけています。

 浴張さんは、とにかくたくさんの交流会に参加しました。業種問わず様々なイベントに参加し、中には有名な人に出会うこともありました。そして、数多くの名刺を集め、周りに自慢していました。

 ある時、二人は時を同じくして、独立することになりました。

 吉田さんは、これまでに培ったコネクションの中で、懇意にしている人材に挨拶にまわりました。すると、みるみるうちに、資本について協力してくれる者、社員として働きたいと申し出てくれる者、仕事をあっせんしてくれる者が出てきました。

 対して浴張さんは…どこに連絡をいれても、あまり良い知らせが入ってきませんでした。中には連絡しても自分自身を覚えていない人もいましたが、それもそのはず。浴張さん自身も、名刺を前に、その人がどのような人だったかほとんどの情報を忘れてしまっていました。
 きっと、向こうも同じように、浴張さんの事を重要な人物だとみなさなかったのでしょう。これでは、協力者が現れるはずもありません。
 
 「狐と木こり」の回で、人脈構築の際は周囲の基盤を固め、そのうえで活動範囲・フィールドを拡げて、ネットワークを広げていこう、という記事を書きました。
 それでは、知り合いは多ければ多いほうがよいのでしょうか?答えは「否」です。

 今回紹介するのは、150人の法則です。
 イギリスの人類学者、ロビン・ダンバー氏が提唱するこの150人の法則、これは何について述べているものなのでしょうか?

 2人のコミュニケーションを1本の線で結ぶと、1通り。3人それぞれのコミュニケーションを線で結ぶと、3通り。4人それぞれだと、6通り…というように、人が増えるにつれコミュニケーションの数は爆発的に増えていきます。
 これを数式に当てはめると、
  n(n-1)/2
 となり、計算機科学におけるオーダー(O-記法)で表すと、
  O(n^2)
 となります(^は乗数を表す)。
 常識は、人数が増えるにつれ、二次曲線上で爆発的に増えることを意味しています。
 ダンバー氏は、人(霊長類)の脳の処理能力は、一般的に11,000強程で限界に達すると目算し、その結果処理できる人数は約147.8人と、ほぼ150人に等しい結果に帰結すると計算しました。

 また、世界各地に住む民族の集落数を集計し、集落の平均人口が148.4人であると統計しました。

 ある企業では、上法則を取り入れました。工場で働く社員の数を150人に制限し、それを越えるようであれば新たに工場を増やす作戦にでました。すると、その企業は順調に発展していきました。

 例えば、携帯電話のメモリの数。150人ぐらいがせいぜいアクティブにコミュニケーションが取れているのではないでしょうか。SNSなどでも同様です。もちろん人の縁は大切ですので、150人までに制限する必要はありませんが、筆者は端的にこの法則を裏付けていると考えます。

 人は、150人までのコミュニケーションがアクティブに利用できるというのが、この法則です。
 それでは、この150人を、どのように割り振っていくべきでしょうか?基盤をより強固にするため、すべて仲間内で費やすべきでしょうか?

 あわせてもう一点、構造的空隙の理論を紹介します。
 この理論は、シカゴ大学の社会学教授、ロナルド・バート氏が自身の文献「Structural Holes」にて提唱し、東京大学COE特任教授で社会ネットワーク研究所所長の安田雪氏が国内で広めている概念です。

 この理論では、人は、閉じられた、密結合な集団では同質の情報が循環され、知識が硬直化してしまうと説明しています。より「疎」な結合では、ネットワークを図示した際に多くの「空隙(くうげき)」を持つネットワークが、より強い立場に立っている、といった理論です。

 この理論に関しては、国民性や外部からの力など、諸条件を無視しているようにも見受けられます。ただ、内輪で盛り上がっているだけでは進歩しないというのも確かでしょう。
 
 自分が持っているネットワークを構築する人数許容のためのリソースは、150人です。このリソースを、どのように分配しますか?
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2009年06月24日

ずるい狐

テーマ:ディベート

 二屋さん、美居さん、昆さんと、3人の社員がいました。
 3人はそれぞれチームを持ち、そのリーダとして後輩を管理していました。二屋さんと美居さんは昆さんより年上で在籍年数が多く、昆さんよりも多くの後輩を指導していました。

 二屋さんは、感覚で仕事をするタイプ。勢いはありますが、その場その場での場当たり的な対応や、見積の甘さが目立ちました。

 美居さんは、静かに仕事を行うタイプ。慎重さが目立ちますが、頭が固くて了見がせまく、対応にも遅さが目立ちました。

 昆さんは、理路整然としていてかつ人の面倒見がよく、雄弁で快活でした。

 それぞれのチームのメンバは、3人が話す場を度々見ながら過ごしていきました。そして、理知的で説得力を含み、人間性の高い昆さんの会話を聞くにつれ、昆さんの人間性に惹かれ、少しずつこの人の下で働きたいという思いを募らせ、しだいに公言するようになっていきました。
 
 やがて、後輩からの人気が後押しし、大きなプロジェクトのマネジメントを任されるようになりました。

 ビジネスを遂行する上で、人に信頼されるためには、適切な修飾語を添えた、説得力のある話し方が必要になります。また、議論において相手方が論理的に誤った内容を主張している場合、その矛盾を的確に指摘するべきです。沈黙していた場合は肯定の意味にとられてしまいます。

 ディベートは、アメリカやイギリスで教育目的で発展してきたもので、最近では、外国語教育などにも用いられているようです。

 ディベートの目的は、説得力のある話し方を身につけることにあります。決して人を欺くため、また、相手を負かす技術を身につけるためのものではありません。
 この訓練を行った際、副次的な効果として、以下の能力の向上が認められると一般的に言われています。
 ・情報整理能力
 ・リアクションスピード
 ・要点をまとめる力
 ・注意深く話を聴く力(傾聴力)
 ・(広い意味での)話術
 ・論理的思考力
 ・視野の狭窄対策(応用力)
 ・能動性
 ・協調性

 それでは、ディベートの際に使用する論理展開をみていきましょう。
 ディベートは、ロジカルシンキングに大きく関わってきます。
 
 まず、三角ロジック
 
sankaku_logic.gif

 議論展開の基本型です。
 データ・論拠・主張をもとに、議論を展開する方法です。上→下方向へは、Why So?(なぜそうなるのか)を表し、下→上方向へは、So What(だからどうなるのか)を表します。
 「データ」→「論拠」→「結論」の順に論理展開していく方法を帰納法的アプローチ、「論拠」→「データ」→「結論」の順に展開していく方法を演繹法的アプローチと呼びます。

 この三角ロジックを繰り返し論理展開する手法を、階層三角ロジックと呼びます。
 
kaisou_sankaku_logic.gif

 三角ロジックは俗に「三段論法」などと呼ばれますが、三段だけでは論理の展開が広がらず、弱いものになってしまいます。そこで登場する階層三角ロジック、ひとつの結論をそのまま論拠とし、次のデータと照らし合わせながら次の結論を導き、それを繰り返していく方法です。

 そして、トゥールミン・モデル
 
toulmin_model.gif

 イギリスはロンドン生まれ、オックスフォード大学や南カリフォルニア大学で講師をしている哲学者であるスティーブン・トゥールミンが考案した議論モデルです。
 トゥールミンは、上記の三角モデルの帰納法的アプローチに、論拠をバックアップする「裏付け」、矛盾点を解決する「反証」、主張の正確性を保証するための「限定」を論理展開に持ち込みました。
 ディベートで相手が攻めるであろう論理のツボを、自ら先駆けて解消する手法です。

 ディベートは様々な副次効果を持ちますが、本来、楽しいものです。法廷を舞台としたドラマやゲーム、党首討論など、コンテンツとしても人気があります。
 この技術を取り入れ、論理的に考え、聴き、判断し、伝える力を身につけましょう。もちろん、その元となるロジカルシンキングをあらかじめ習得することも同じように大切です。ディベートを介すことにより、ロジカルシンキングは“活きた”知識として身につくことでしょう。
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